教授挨拶2005年

2005年3月28日付けで,長崎大学熱帯医学研究所 感染症予防治療分野(熱研内科)教授に就任することになりました有吉紅也(ありよし こうや)です.

これまで築き上げられてきた内科臨床教室としての伝統と私が持つ海外ネットワークを組み合わせて,日本でも海外でも活躍できる国際感覚豊かな医師を育成したいと考え,この大役を引き受けさせていただくことを決心しました.私が歩んできた道をご紹介し,将来この教室をどのように運営・発展させてゆこうとしているのか,ここに新任のご挨拶として述べさせていただきます.

私は,東京の市中病院で内科研修を行った後,アフリカで臨床医として働く為にロンドン大学に留学し臨床熱帯医学を学びました.そして1989年,ジンバブエで内科診療を行ったのですが,そのときの経験から,一日本人医師が臨床のみで途上国医療に貢献することの限界を感じました.なぜなら,その国の発展にとって最も理想的な状態は現地の医師によって自立的に行われる医療に他ならないと感じたこと,そして,あまりに若いエイズ患者さんたちを,毎日のように,なす術も亡くすという大変悔しい経験をしたからです.その後,エイズ問題の解決に向けて少しでも貢献したいという思いで研究の世界に入り,幸いなことに,英国セントメアリー病院Jonathan Weber教授やオックスフォード大学分子免疫グループAndrew McMichael教授のもとでサイエンスの最先端に触れながら研究する機会に恵まれました.そして,1992年より伝統あるMRC(英国医学研究協議会)の上級研究員として西アフリカガンビア共和国へ派遣され,そこで6年間,文化人類学,疫学,臨床から微生物,免疫,分子生物学まで様々な専門家が参加する研究チームの一員としてエイズの臨床科学研究に従事してきました.ガンビアの研究所は,欧米・アフリカ諸国から研究者が集まるまさに国際色あふれるところで,そこで私は国籍に関係なくチームを組んで研究することから生まれるパワーと公益性の高い研究は国境を越え全世界の医学の発展・途上国医療の向上に貢献できることを知りました.1998年に帰国してからは国立感染症研究所に在職し,これまで4年間をタイに滞在してJICAタイ国立衛生研究所プロジェクトの一環として医学研究を行い現地の医師・研究者を育成して参りました.

さて,熱研内科は熱帯医学を標榜する日本で唯一の臨床教室です.その熱研内科が負うべき使命とは,熱帯地域(発展途上国)で活躍できる臨床医・臨床研究者を育成すること,そして,公益性の高い医学研究を通じてグローバルな医学・医療問題解決に貢献することにあると私は考えます.熱帯地域(発展途上国)での公益性の高い医学研究とは,現地の患者さんを現地の医師たちと共に診療し,その臨床現場を深く知ることから始まり,そして現場で生じている問題を察知し,その問題解決に向けて様々な角度から科学的に考察することから生まれます.そのような臨床研究の経験をもち,訓練を受けた医師は,医療分野における真なる国際協力に貢献できる人材となるでしょう.実際,WHOなど国際機関の中枢で活躍する人材の多くは,過去に現地で臨床研究を行った経歴を持っております.従って,私はこの熱研内科の使命を果たすため,途上国で活躍できる臨床医育成の一環としても,質の高い臨床研究を追求します.

熱研内科はこれまで,歴代の教授と先輩たちによって,国内でも有数の呼吸器・感染症内科としての基盤を築き上げ,地域の医療に貢献してきました.また,基礎科学分野でも国際的な研究成果をあげてきました.国内で通用しない臨床医や研究者は熱帯地域(発展途上国)でも同様です.従って,海外で活躍できる臨床医を育成するためにも,さらには,長年海外で働いた日本人医師を日本へ復帰させるためにも,日本国内にレベルの高い診療・教育・研究活動を維持・展開することは必須と考えます.病に苦しむ患者さんを臨床医として,あるいは研究者として救いたいという気持ちは,海外でも国内でも同じであり,私は,今後も国内での呼吸器・感染症内科としての活動を維持・発展させる努力を惜しみません.

京都生まれ京都育ちで,出身大学が北海道旭川である私にとって,熱研内科は初めて入局した医局です.入局してまだ一ヶ月半ですが,これまで熱研内科には全国から様々な大学の出身者が集り,国境なき医師団へ参加するもの,スマトラ沖地震で緊急援助活動に参加するもの,アフリカでJICA専門家として活躍するもの,タイへ留学するものから,国内や米国で呼吸器・感染症内科分野の臨床・研究に精進するもの,さらには医師らと共に基礎研究に取り組む大学院生が同居していることがわかりました.そして,私のような海外で大半を過してきた教授を温かく受け入れてくれました.私は,この多様性をもつ人々を包容できる教室の伝統はすばらしいと思い,今後も引き継いで行きたいと考えております.

途上国医療へのかかわり方は,人それぞれ千差万別です.私自身が歩んできた道は研究中心でしたが,日本・アジア・アフリカ・欧米に広がる私の人脈は,研究分野を超え広範囲にわたります.熱研内科が既に築き上げた土台の上に私の経験・ネットワークを加え,いろいろなかたちで熱帯医学(途上国医療)にかかわりを持とうとする全国の日本人医師や大学院生が世界へ羽ばたくお手伝いが出来ればと願っております.そして,熱研内科とかかわりを持った医師が,海外でも国内でも国境を越えて活躍できる臨床教室へ発展させることを目指します.

皆さん,是非,新しい熱研内科の門を叩いてみてください.

平成17年5月14日
長崎大学熱帯医学研究所 感染症予防治療学分野(熱研内科)教授 有吉 紅也



北タイにて,現地の医療スタッフと共に子供を連れたエイズ患者を診察する筆者
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