教授メッセージ2017年

● 5月のメッセージ

ピーター・ピオット先生の長崎訪問

5月24日から3日間ピオット先生が長崎を訪れてくださった。今回の訪問の目的は、2012年11月に初めて長崎を訪れてから5年振りで、長崎大学とのパートナーシップの進捗を確認することであったが、この機会に市民向けの講演会を開催していただいた。

講演会のタイトルは、「エボラ発見者が語る~エボラと闘った40年から学んだこと~」。

ピオット先生は、市民に可能な限り正確に情報を伝え、また、同時に自分の気持ちも伝えることを強く望まれ、唯一それができる、かつてエイズ問題で一緒に闘った東大名誉教授の岩本愛吉先生に個人的に通訳をお願いすることになった。公務でお忙しい中、わざわざ通訳のために長崎までいらしてくださった飾らない岩本先生の人柄と、ピオット先生のコンビが、会場を温かい雰囲気に包み込み、とても良い講演会になった。

講演会の最後に、「あなたは、エボラへ立ち向かおうとしたときの恐怖を、どのように克服したのか」との質問に対し、「もともと、自分はスキーも満足にできないくらい、危険なことは苦手です」と言って、しばらく考えた後、「・・・”本当にやるかやらないか”は、あの時も、やはり悩んだけれど、最後の最後に自分を後押ししたのは、自分がなぜ医師になったのかということを思い返したからかもしれない。医師としてひとを助けたい。その気持ちが勇気をくれた」とおっしゃったのが、とても印象に残っている。

2012年11月に初めてピオット先生が長崎を訪問して以来、先生の並外れたリーダーシップに、私たちは、いつの間にか引き込まれながら、長崎大学とロンドン大学LSHTMとのパートナーシップ(下記)は、ここまで成長してきた。今は、その最終形とも言える長崎大学とジョイントPhDディグリーに取り組んでいる。このJDの話を2年前に持ち掛けられたときは、正直、信じられなかった。私だけではない、ピオット先生の側近や、ほとんどのLSHTM教授も、その話をもちかけたとき驚いた顔をした。「どうして長崎大学と・・・?」 よく考えてみると、JDを実現させることのメリットは双方にある。その意義に疑問符を投げかける人たちの問にひとつひとつ答え、その実現に向けて、努力している。


ピオット教授・エドモンド教授を囲んで、TMGH学生らとの懇親会 5月25日

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)との戦略的パートナーシップ
これまでの経緯:

 2012年11月 ピオット先生長崎初訪問
 2013年4月   学術交流協定MOU調印
 2014年1月   LSHTM部局長会議(SLT)にて承認
 2014年3月   マーケットプレイスにてLSHTM学内に周知
 2014年10月 LSHTMから長崎へ教授2名が派遣
 2015年7月   LSHTM方式の疫学・統計学講義が開講
 2015年10月 TMGH研究科新設、MTM, MPH, MScの修士課程が開講
 2016年9月   グローバルヘルスに関する日英卓上会議開催
 2017年3月   博士後期課程、国際連携グローバルヘルス専攻設置計画書提出

● 1月のメッセージ

長崎の離島で世界最先端のインフルエンザワクチン研究

人口約2.2万人の上五島の医療を担う上五島病院とのお付き合いは、7年前にさかのぼる。予期せぬことが重なって複数の内科医が急に減る事態となり、対応に困られた八坂院長が、地域医療講座の前田教授と一緒に私の部屋を訪ねて来られたのが最初だ。熱研内科の教授として、私にできることは、上五島病院の状況を教室員に伝え、ボランティアを募ることだけであった。すぐさま総合内科ができる4名の中堅医師が手を挙げてくれ、3か月でローテートをする診療支援が開始された。 それ以降、離島という最先端の地域医療現場で総合内科研修を希望する若手医師が次々と現れ、これを機会に上五島病院は熱研内科にやってくる若手医師にとって人気の研修先となった。八坂院長をはじめ上五島病院内科・小児科の先生方には、医師の育成面で本当にお世話になっている。

実は、上五島という離島は、上五島病院の先生方が、厳しい環境下で真摯に診療を継続されているがゆえに、世界でも例を見ない最先端の研究ができる臨床疫学フィールドでもある。私たちも、この病院で集積されたデータを解析する機会を頂き、その結果が最近Vaccineというワクチン分野で世界のトップジャーナルに発表された。これは、最初に上五島病院で診療支援を行ったチームのひとりだった齊藤医師が、小児科の小森先生が長年コツコツと集めて来られたインフルエンザの臨床情報の存在を知り、それを新たな統計手法を使って解析させていただいた結果生まれた研究だ。前年のインフルエンザ感染や、前年のインフルエンザワクチン接種が、その年のインフルエンザワクチンの効果にどのような影響を与えているかを明らかにする新たな発見につながった。この研究成果をどのように解釈し、将来のインフルエンザ対策に組み入れてゆくかについては、さらなる慎重な検討を要するが、全世界のインフルエンザワクチン接種のあり方に影響を与える重要な研究になったことに間違いはない。

日本の地域医療の最前線である長崎の離島に、世界の医療を変える医学研究の最前線があることを、改めて実感させられた研究論文となった。

2017年1月21日



上五島 桐教会(岸川先生撮影)

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