教授メッセージ2018年

● 9月のメッセージ

新生熱研内科
~感染症内科、熱帯医学・グローバルヘルスと総合診療~

熱研内科は、今年の4月に大きな分岐点を迎えた。熱研内科は、これまで伝統としてきた呼吸器内科をベースとする感染症内科教室から、総合診療をベースとする感染症内科教室を目指すことになった。

このような思い切った改革を断行した理由は、ふたつある。

ひとつは、感染症科と最も親和性のある診療科は、総合診療であるからだ。実際、我々の感染症内科へ紹介されてくるコンサルテーション症例は、整形外科、脳外科、耳鼻科、産婦人科、皮膚科、眼科、精神科、口腔外科等、ほぼすべての診療科からの紹介であり、感染症科診療の背景は、総合診療であることを日々実感している。

もうひとつは、総合診療科は、感染症科と同様に、途上国医療・熱帯医学・グローバルヘルスにかかわるうえで、最も必要とされる診療領域であるからだ。それが途上国であれ、日本国内であれ、医療過疎地においては、自分のかかわる地域の医療ニーズに応じて、柔軟に必要な専門性を獲得する努力を怠らない総合診療マインドをもった医療従事者が求められている。

さらに、2月に長崎大学病院総合診療科教授に前田隆浩先生が就任したことが、このタイミングで改革する大きな契機となった。前田教授は、これまでも長崎大学大学院医歯薬学総合研究科先進予防医学共同専攻地域医療学分野の教授として、長年にわたり長崎県内の離島医療に身を捧げられてこられた先生である。私が、長崎大学のなかで最も尊敬する教授のひとりだ。途上国での医療協力を志す医師の多くは、日本国内では医療過疎やへき地医療にかかわりたいという志を持っており、熱研内科に入局してきた医師で、離島やへき地医療に携わりたい医局員は多い。これまで、前田先生にお世話になり、離島・へき地へ派遣された医局員は、数知れない。そのようなこともあり、前田先生が率いる総合診療科と熱研内科が率いる感染症内科が、さらに連携して診療し、助け合って教室運営することは、自然な流れだった。

現在、熱研内科は、医局の壁を越えて、総合診療科と緊密に連携しながら同じ病棟(国際医療センター1階)で診療し、病棟回診や勉強会などのいくつかの活動を合同で開催している。また、熱研内科の山梨啓友講師が、総合診療科と感染症科の病棟医長を兼務し、ローテーションでまわってくる研修医は感染症科でありながら、総合診療科の患者のどちらも受け持つことができる。この体制になってからほぼ半年が経過したが、大きな混乱はなく、順調に機能している。

実は、今年4月に、もうひとつの大きな出来事があった。それは、熱帯医学・グローバルヘルス研究科(TMGH)のChris Smith教授が、正式に熱研内科教授を兼任することになり、熱研内科に新たな顔が生まれたことだ。Smith先生は、英国の総合診療医GP(General Practitioner)である。月曜日の教授回診には、前述の前田先生と私を含め3名の教授がカンファに参加している。そして、Smith先生には、英語でケースディスカッションを定期的に指導していただくことになった。

海外では、途上国医療にかかわり、国内では、感染症内科、総合診療、地域医療をやる。そして、熱帯医学研究所のミッションである研究を積極的に行い、学術的にも貢献する。そのような多様な医師としてのキャリアを、さらに強力にバックアップできる体制ができたと思っている。

熱研内科は、前田教授率いる総合診療科やTMGHのSmith教授とともに、さらに開かれた医局を目指してゆく。

2018年9月28日


キリマンジャロのふもとにあるMoshiという町で、ロンドン大学の熱帯医学専門医コース
(East African Diploma of Tropical Medicine and Hygiene, DTMH)が開催されている。
現在Smith教授とともに、アジアの熱帯医学に焦点をあてた新たなDTMHを企画している。

● 1月のメッセージ

長崎大学とロンドン大学衛生・熱帯医学大学院の国際連携グローバルヘルス専攻
(ジョイントPhDプログラム)

ジョイントPhDプログラムのホームページが、ついに公開された。
https://lshtm.ac.uk/study/research/nagasaki-lshtm-phd

学生は、新たにできたホームページのResearch topicsページにアップされた25件程度あるジョイントリサーチプロジェクトのなかから、第二希望までを自らの博士プロジェクトとして選択し申請する。そして、申請した学生とプロジェクトの組み合わせから、ベストマッチ(5~9組)を両大学の教官で構成される選考委員会で公正に選ぶものだ。学生は、入学と同時に両大学の正規の学生として登録され、両大学に最低6か月は滞在することが条件となる。プロジェクトはすべてロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)と長崎大学の共同研究であり、両大学の教員が共同で学生を指導する。よって、学費は両大学の半額となる。修士課程を修了していることが前提であり授業はない。純粋に内容の濃い英国スタンダードの研究成果を出して、一冊のテーシスとしてまとめ上げることが卒業の条件だ。

昨年12月11日、Piot先生と河野学長がLSHTMの荘厳な図書館の一室Bernard roomで、長崎大学とLSHTMとのジョイントPhDに関して具体的な約束事が記述された学術協定書へサインされた。その瞬間、私は感無量で、自然に笑っていた。

Piot先生が長崎を初めて訪れたのは2012年11月、それから半年後に、シンガポールで再会したPiot先生から、これから始まる両大学の一般的な学術協力に関する協定書へサインをしていただいているとき、「こんなのサインするのは、簡単なんだよね・・・」とつぶやいてらっしゃった。その意味を痛感した5年間だった。

“大変なのは、何かを実現させること”

ゴール・目的は何かと聞かれたら、それは、ひとつ「日本は、今よりもっとグローバルヘルスで活躍できる」、「長崎大学とLSHTMとの戦略的パートナーシップが、そのセンター(COE)として原動力になる」。その一点を共通認識として、Piot先生は、長崎大学をLSHTMの戦略的パートナーと位置づけし、熱帯医学・グローバルヘルス研究科の設立に向けて、様々な支援をしてくださった。しかし、これまでに出来上がったものは、修士レベルの教育体制であり、やはり国際級の博士レベルの教育・研究体制にまで発展しなければ、世界へのインパクトはまだまだ弱い。

Piot先生から、このジョイントPhDについて提案を受けたのは2015年4月のことだった。100年以上のLSHTMの歴史の中で、システムの異なる外国の大学との間でジョイントPhDは前例がない。文科省にとっても、日本の地方大学が世界のトップの大学とジョイントPhDを実現させた前例はない。最初は、ロンドン側や長崎側にも反発が大きかった中で、スタートするまで、あと数年はかかると思っていた。先月の協定書にサインされた後も、次々とそれまで気づかなかった課題がでてきて、ホームページが公開されるのを確認するまでは、正直信じられなかった。

走り続けてきた5年間、教室のみんなをはじめ、周りの皆さんに、本当に迷惑をかけた。励ましサポートしてくださった本当に多くの(長崎大学やロンドン大学のスタッフのみならず、日英政府関係者の)皆さんに感謝、感謝、感謝。

2018年1月22日


調印式 2017年12月11日LSHTM図書館にて

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