長崎大学熱帯医学研究所臨床感染症学分野・長崎大学病院感染症内科(熱研内科)

海外活動

現在実施中

ガンビア

ロンドン大学・ガンビアMRC見学を終えて(ガンビア編) 02〜15/Feb/2019 more

増田 真吾

2019年2月に2週間の日程でイギリスのロンドン大学とアフリカのガンビアにあるMRC研究所を訪問しました。
2018年度に文部科学省の卓越大学院プログラムに、ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院(LSHTM)と長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科(TMGH)が中核母体としてけん引する学位プログラムが採択されました。2019年3月9、10日に長崎にて同プログラムのキックオフシンポジウムが開催されること、またJoint-PhDプログラムの調整、さらにはガンビアにて現在行われている研究の進捗確認のために有吉教授が現地に向かわれることとなりました。非常に幸運なことに、海外での仕事や研究に興味のある私も、今回同伴させていただけることとなりました。

ガンビアは西アフリカにある国で、セネガルに周囲を囲まれています。中央に大きな川が流れており、飛行機から見てもガンビアに入った途端、急に緑が多くなります。冬のロンドンからの気温差は30度くらいありました。私の同期の池田先生が1年弱研究と臨床のために出向している国で、MRC Gambiaには有吉先生も以前勤務されていました。日本から入国するときにはセネガル大使館にVISAをお願いするのですが、なぜか毎回のようにガンビア入国の際にはセネガルでのVISAが有効ではないようで、入国審査の際に非常に煩わしいこととなります。最終的には今回はMRCの名前を出したところ、それまでの事が何だったのかというくらいスムーズに入国できました。ガンビアの首都バンジュールは非常に活気のある都市で、海外(特にヨーロッパ)からの観光客が多い都市でした。

ガンビアではまずBasseという東端の村まで車で移動し、マラリア研究の現場を直に見学させていただきました。ガンビアにもマラリア患者はいますが、非常に限定的な地域のみで罹患します。すでに西側の都市部ではマラリアは蔓延しておらず、マラリア研究のためには流行のある地域へ調査に行く必要があり、それがBasseでした。翌日には、調査を手伝ってくださっている病院・診療所へ訪問し、また、研究所内の見学なども行なった後に再度陸路を数時間かけて市内まで戻りました。MRC Gambia内ではLSHTMと同様に、多くの方々とキックオフミーティングの調整を行いました。私は池田先生に案内していただき、MRC内にある病院の見学をさせていただきました。小児と成人病棟を案内していただきましたが、MRCがかんでいることもあり、エコー機材などは充実しておりました。池田先生が非常に現地スタッフから愛されているのが印象的でした。

ガンビアには移動もあったため4日程度訪問し、帰国となりました。この2週間は非常に濃い時間でした。文章に起こせていないことも多々あります。多少市場で奥に連れられてボッタクられたり、ブリュッセル航空のストライキにあって飛行機変更を余儀なくされたり、などの小さなトラブルもありました(笑)。様々な方々のご協力・ご厚意のおかげで、安全に、そして非常に濃密で一つのターニングポイントとなる機会を頂きました。

写真はBasseに流れていた川です。川の行き来には船を使って移動します。写真には写っていませんが、大きな船もあり、車の移動も可能です。1時間の間にも何度も数隻の船が往復し、人とモノを運んでいました。川の近くには店も立ち並び、住民はそこで洗濯をしたり体を洗ったりしていました。奥に見えるのは中国の会社がここの川に大きな橋を立てる工事を着工しているところです。現地の人たちを雇いながら夜間も含め仕事をしていました。まだまだここに暮らす人々の生活は発展途上にあります。ただ10年後にはどうなっているのでしょう。橋ができて交通がより盛んになり、産業が発達し教育が浸透するのでしょうか。私たちの行なっている医学も、より浸透していくのでしょうか。そんな少し真面目なことを少しだけ考えてみた場所になりました。

繰り返しになりますが、2週間は非常に濃密な時間でした。人生のターニングポイントとなりました。この機会を与えてくださった有吉先生をはじめ、多くの方々に心よりお礼申し上げます。

左から2番目が筆者
左から2番目が筆者

ガンビアでの研究報告 その1(2018年) more

薄田 大輔

私はもともと発展途上国での医療協力に従事すること夢見て医師を志しました。自治医科大学を卒業後、総合診療医として富山県内で地域医療に従事する傍ら、以前より興味があった熱帯医学の勉強・研究のため、2011年度にMTMに在籍させていただきました。その後は再度北陸に戻り金沢医科大学臨床感染症学教室の助教として地域医療に従事しておりましたが、今回、奨学金を得て海外で一年間の研究を行う機会を頂きました。長崎大学熱帯医学修士課程時代にお世話になった有吉教授に留学先について相談させていただいたところ、有吉先生が過去に勤務されていたMedical Research Council Unit The Gambia at London School of Hygiene and Tropical Medicine (MRCG at LSHTM; MRCGと略します)で臨床研究をさせていただくこととなりました。

私の研究内容は、新しく開発されたマラリア診断法について、これまでの診断法(顕微鏡検査法、迅速診断キット)と比較してその有用性の比較・検証を行うことです。研究は、首都から450 km離れたガンビア川上流にあるBasseという村で行います。
2017年11月下旬のMRCGへの事前訪問、2018年2月の長崎で共同研究者との打ち合わせを経て、日常診療に従事する傍ら、研究計画書の作成を開始しました。また、MRCG所長のD’Alessandro Umberto教授を指導者として Davis Nwakanma先生を紹介いただき、彼や共同研究者との定期的なメールでのやり取りやディスカッションを通して、研究計画書の修正を定期的に行いました。
4月のガンビア到着後、FajaraにあるMRCG本部から徒歩3分程度の所にあるアパートに住み、現地での生活に慣れながら、MRCG内の各担当部署と協議を行い研究内容の調整を引き続き行いました。
5月下旬の共同研究者のガンビア訪問時に、実際に研究を行うBasseに行き、MRCG Basse Field Stationの各担当者と研究内容の打合わせを行いました。6月上旬のミーティングでプレゼンテーションを行い、そこで頂いた指摘事項をもとに研究計画書を修正し、倫理委員会での承認を経て正式に研究開始となる予定です。
現在は、研究実施手順書の作成、予算見積書の交渉、研究契約書の作成を行いつつ、研究で使用する機器のガンビア到着に向けて準備中です。

MRCGは、毎年Lancetなどの超一流雑誌に論文を何本も掲載されるほどの素晴らしい研究施設であり、またUmberto先生、Davis先生を始め、研究所内のどの職員も、はるか遠くアジアから来た私に対して寛容かつフレンドリーであり、毎日が非常に過ごしやすい雰囲気です。このような素晴らしい研究機関で研究に携わることができ、有吉先生はじめ、関係の皆様方には感謝しかございません。

なお、ガンビアはサバナ気候に属しており年中通して暖かく過ごしやすいです。休日には、近くにあるビーチ(研究所から徒歩10分程度)に行ったり、近郊の町に出歩いたりして気分転換を図っております。


研究所正門付近。砂が多くアフリカらしいです。

研究所内部。緑が多いだけでなく、鳥やサルなど野生動物もいます。施設内にいるとアフリカにいることを忘れてしまうくらいです。

MRCGから徒歩10分ほどに位置するLeybato restaurant。有吉教授もガンビア滞在時代よく行かれたそうです。大西洋を見ながら食事や休憩ができ、リラックスするには最高の場所です。

ガンビア滞在記(2017年) more

薄田 大輔

先日Medical Research Council unit Gambia(MRCG)の70周年シンポジウムに参加するため、有吉教授とともにガンビアに渡航させていただきました。

ガンビア共和国はわずか岐阜県ほどの国土の東西に細長いとても小さな国です。ガンビア川を取り囲むようにして位置しており、海に面している西側以外は周りを大国セネガルに囲まれています。もとはイギリスの植民地であり、かつて奴隷貿易が盛んに行われた地域でもありましたが、1965年に独立しました。今では、珍しい鳥や綺麗な海などがヨーロッパの人たちに人気の土地となっています。
そんなガンビアで、MRCGは、サハラ砂漠以南の西アフリカにおける公衆衛生上重要な疾患による死亡や罹患を減らすために、1947年にイギリスによって設立された研究施設です。低~中所得国におけるMRC機関の中で最も投資されている重要な施設です。様々な国籍のスタッフが1000人以上働いており、180人前後の国籍豊かな生徒がトレーニングしています。研究施設が整っていることはもちろん、いくつか診療所も開設しているため、臨床的なトレーニングも可能であることも魅力のひとつです。

MRCGは今年70周年を迎え、それを記念し3日間のシンポジウムが開催されました。MRCG関係者がホテルの広間がいっぱいになるほど集まり、人種も国籍も様々な方が活発に議論する様子は、日本ではなかなか見ることができない光景でした。MRCGは毎年様々な国籍のスタッフや学生を多く受け入れていることから、多文化・多言語・多人種の環境がごく自然にあり、お互いがお互いの違いを受け入れるという姿勢が当たりまえにできていると感じました。
始めの2日間は、MRCG関係者の中でもそうそうたる面々が登壇される、講演が中心でした。グローバルヘルスについての大まかな話から、マラリア、結核、ワクチン、妊産婦医療、栄養、気候変動など、登壇者それぞれのテーマに基づいた最新の知見や現在進行中の研究内容など、非常に充実した内容でした。皆その道のエキスパートばかりで、そんな方が何を考え、これから何をしようとしているのかを知ることができたのは、またとない貴重な経験でした。しかも驚いたのは、そんな雲の上のような方が非常に気さくで、私のような若輩者にも、休憩中にコーヒーの列で隣に並んだだけで、とてもカジュアルに声をかけてくれるのです。「どこから来たの?どんな仕事をしているの?」と。今回の滞在中に私の来年度の行く先が決まったのも、全く面識がないにも関わらず、ある女性教授が休憩中に「良かったらランチ一緒にどう?」とまるで旧知の仲のように有吉教授に声をかけたことが始まりでした。実は、私たちはビザの不備で空路でガンビアに入国できなかったため、やむを得ず隣国セネガルから陸路で入国したという異例の事態を引き起こした日本人として、MRCG中の人々に知れ渡っており、それをきっかけに親しみを感じてくださっているようでした。その他にも、気軽なノリでランチやディナーに誘って下さる方が毎日のように現れ、思いがけずそうそうたる面々と食事を共にすることになってしまった私は、毎回目が回りそうでした。

最後の1日はMRCGの見学ツアーでした。いくつかのグループに分かれ、研究所内部を散策しました。立派な設備や診療所の見学に加え、合間にいくつかの研究グループからの成果発表があり、最後に屋外の広場でポスターセッションが行われ、自由に意見交換をしました。気温が40℃近かったこともありましたが、広大な敷地は端から端まで歩くだけでへとへとになるほどでした。素晴らしい設備はもちろんのこと、誰と話しても本気でアフリカの健康を改善したいという思いが言葉の端々から感じられ、非常に感銘を受けました。また、研究員の方にもたくさん声をかけていただき、毎回聞かれるのが「あなたは何の研究をしているの」というものでした。私はまだ、来年度何をするかは明確に決まっていなかったので、その通りに答えるしかなく、寂しい思いをしたのですが、彼らの熱心な様子にとても良い刺激を受けました。そういう意味では、本気で発展途上国の医療に貢献したいと考えている方には、MRCGはこの上ない環境であると感じました。

目まぐるしく過ぎていった今回の滞在でしたが、得るものは非常に多く、頭は常にいっぱいでした。短期間にも関わらず、たくさんの人の考えに触れることで、今までの自分の認識が変わった部分もありました。来年度から私はこの地で活動を始めることになります。不安も多くありますが、この素晴らしい環境できっと多くの良い出会いがあり、ぐんぐん成長していけるに違いないと確信することができる、実りある滞在であったと感じます。来る4月へと思いを馳せ、わくわくで胸もいっぱいに帰国の途についたのでした。(なお、帰りは無事に空路で出国できました。)

今回はガンビア渡航にあたり、大変お世話になりました有吉教授をはじめ、ご協力いただいた先生方には心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

熱帯医学・グローバルヘルス研究科開設に向けて、アフリカでの学生実習の可能性(2014年) more

熱帯医学研究所 臨床感染症学分野
大学院生 島田 郁美

2014年7月6日から9月7日にかけて、ガンビアのMedical Research Council (MRC)研究所に行ってきました。2015年10月開校予定の熱帯医学・グローバルヘルス研究科(TMGH)の海外実習予定地を視察するためです。
ガンビアは西アフリカに位置するアフリカ最小国で、かつては英国植民地でした。 1947年に英国がアフリカの医療向上を目的とした医学研究施設としてMRC研究所を設置しました。それ以来、英国を始めとする欧州、アフリカ各国から多くの研究者が来訪し幅広い分野で医学研究が行われています。当科有吉教授がかつてHIV関連研究を行った施設でもあります。ガンビアは治安がよく、英語が公用語のため日本人には住みやすい国と言えます。MRCによる研究の歴史が長く研究環境が大変整っている上に、MRC研究所は留学生、短期実習生も常時受け入れているため学生実習にも大変慣れた施設です。英語圏出身者ばかりではなく、フランス語を公用語とする西アフリカ諸国からの留学生も多数在籍します。これらの理由から、日本人学生には最適の実習施設であると考えられました。
MRC研究所のメイン施設は首都バンジュールから9kmのFajalaにあります。支所は中部のKeneba、最奥地のBasseに存在します。それに加えて各地にフィールドサイトがあり、アフリカ奥地で研究ができる貴重なネットワークが構築されています。また、MRC Fajala研究所には42床の入院施設を有した病院が併設されており、年間5万人を超える外来患者を診療しています。

滞在中各国からの留学生、実習生にヒアリングを行いました。彼らの実習プランはTMGH校の学生実習にも応用できるものが多くありました。
英国からは多数の医学部生が1ヶ月から2ヶ月にわたって夏期休暇などを利用して渡航しており、それぞれ観察研究を行う傍らで、入院病棟での病棟実習に参加していました。その中の1人、スコットランドのAberdeen大学医学部生は病棟スタッフの手指衛生に関する観察研究を行っていました。最終週に研究結果プレゼンテーションを行い、スタッフに結果のフィードバックがありました。手洗いや手指消毒の不十分さ、その一因として物品配置に問題があること等を指摘した結果、各入院ベッドに擦式消毒用アルコールボトルが配置され、シンクには手洗いプロトコールのポスターが貼られました。こういった衛生環境の整備はアフリカでは稀で、研究の結果小さな改善が得られたのは印象的でした。また、Edinburgh大学免疫学修士学生は、基礎研究としてNK細胞活性について半年間の実験行い、修士論文を執筆していました。このように学部生、修士学生を問わず、短期から長期に渡り学生を受け入れて研究指導することはMRCでは極めて一般的な光景であり、TMGH校のコンスタントな学生実習先として関係構築していくことは十分可能であると思われます。
アフリカ諸国からも多数の留学生がいました。ガンビアを除く西アフリカ諸国のほとんどはフランス語が公用語のため、この地域からの留学生は英語が全く話せません。そのため、半日を語学学校で過ごし、半日はMRCで研究活動に費やすという語学留学と研究留学を組み合わせたプログラムも一般的なようでした。こういった非英語圏からの留学生に、MRC研究所が慣れていることは日本人にとっては大きな利点です。 また、滞在期間中は入院病棟での臨床見学もさせて頂きました。小児16床、成人24床、個室2床という配置で、日本とは全く異なった疾患を診ることができます。特に印象に残るのは小児の低栄養でした。ガンビアは食料難に喘ぐ地域ではありませんが、小児病棟の7-8割は低栄養の幼児で占められています。日本では虐待症例でもなければ、低栄養疾患を診療する機会はまずありません。診察、治療方法など大変勉強になりました。下記は母親の許可を得て撮影した写真です。低栄養には他にも様々な身体所見が表れますが、写真で紹介しやすいものをピックアップしました。

クワシオルコルの2才男児の両下腿です。入院治療後、自分で座れるようになった頃の写真です。下肢の皮膚色がまだらに薄くなっている部分は、クワシオルコルによる浮腫後の皮膚剥離です。足底もかつての浮腫を伺わせます。
同患児の睫毛です。低栄養児は毛髪がカールします。アフリカ人の毛髪はそもそもカールしているためわかりにくいのですが、睫毛が瞼に接するほどまでくるんとカールするのは低栄養の所見なのだそうです。さらに、もう1点。この写真を取るにはタイミングが大変難しいことは容易に想像がつくと思います。本来なら好奇心旺盛な年頃ですので、カメラを向ければまずじっとしていてはくれません。一方、この子はカメラにはほとんど興味を示さず、目をあけてジーッと前を向いていました。入院中、笑顔を見ることもほぼありませんでした。表情の少なさ、自発性の低下も低栄養の一症状です。
他にも、日本でなかなか目にしない疾患として、リウマチ熱、それによる弁膜症と若年者の慢性心不全、マラリア、鎌状赤血球症など多様な疾患を有する患者様を診察させてもらいました。イギリス人専門医による病棟回診では、質疑応答も活発に行われ、大変教育的です。
2ヶ月を通してMRCでの研究、学生実習、臨床を視察し、TMGH校にとって大変有力なカウンターパートになるに違いないと感じました。将来、TMGH校の学生達がガンビアで活躍する機会のあることを強く願っております。



MRC Fajala研究所から徒歩10分のビーチ。

MRC Basse 研究所の裏を流れるガンビア川。夕暮れ時が大変美しいです。

Basse、データ収集に立ち寄った村からの帰り道で車のタイヤがパンク。修理している様子が珍しかったらしく寄って来た子供達。カメラを向けたらダンスを踊ってくれた子も。動画じゃないの、ごめんなさい…。

大きなバオバブの木の下で(2009年) more

長崎大学病院 熱研内科
研修医 宮原 麗子

009年10月末より7週間、アフリカのガンビアという国で、トラコーマ研究のフィールドワークに参加してきました。ガンビアはアフリカ最小の国で、ガンビア川の両側に国土を有している細長い国です。植民地時代にイギリスとフランスとの協定により、セネガルの中央部を流れるガンビア川周囲の土地がイギリス領となりました。そのため、現在も周囲をセネガルに囲まれています。

今回参加した研究は、ガンビアのNational Eye Care Program とイギリスのMRC(Medical research council) の共同研究で、WHOが推奨しているトラコーマ治療が適切かどうかを検討するものでした。WHOの推奨している治療は、地域の罹患率が10%以上であれば、3年間、その地域全員に対して年に1回、アジスロマイシンを投与するというものです。3年後に再度罹患率を調査し、治療を継続するべきかどうかを決定します。今回の研究は、投与期間が3年必要なのかどうかを検討するため、毎年罹患率を調査しています。

私が参加したのは、18ヶ月目のフォローアップで、48地域を2グループに分けて、それぞれの地域を訪問し、こどもたちの目(上眼瞼)を見ていきます。約6000人弱の子供が対象となっています。 私は、2グループのうち1つのグループを任され、ガンビア人5人とガンビアの土地を約6週間ひたすらLand cruserで走ってきました。

どこの村にも大きなバオバブかマンゴーの木があり、その下に机を広げ、子供が来るのを待ちます。ガンビアには住所はありません。住民票ももちろんありません。誕生日や年齢もわからない子供はたくさんいます。なので、聞き取り調査で作られた、census formをもとに子供を見つけます。一つの家に、複数の家族が住んでいることは多く、時には、一家の長となる人が、住んでいる子供を把握していないこともよくあり、子供を見つけ、つれてくるまでが一番大変な作業です。子供がやってきたら、感染がないか眼瞼を肉眼的にみて確認し、さらにPCR検査をするため、Swabで検体をとります。こうして感染がないかを一人ずつ確認していきます。残念なことに(ガンビアにとってはいいことなのですが)、ガンビアでのトラコーマ感染は減少しており、Activeなトラコーマはほとんど見ることができませんでした。

ガンビアにはNational Eye Care Programと呼ばれる政府団体があり、トラコーマに限らず、住民の眼疾患に対応しています。1年ほどの研修を終え、Eye specialistとして働く看護師がそれぞれの地域に少なくとも1人はいて(現在の総数は25人)、地域のクリニックや病院でEye care unitを開いています。Eye specialistの仕事は多岐にわたり、学校での衛生面の教育から手術に至るまで行います。このような人たちの仕事によって、ガンビアの感染率は着実に減少しているようです。現在の問題は、周辺国(セネガルやギニア=ビサウ)での感染をいかに減少させ、ガンビアへ持ち込ませないかということで、現在周辺国での新たなProjectが進行していました。

フィールドワークってどういう風に、どんなことしているんだろう。初めはその単純な興味からでした。London schoolのRobin Bailey教授をはじめ、多くの方にお世話になり、刺激をうけて帰ってきました。この研究が今後の治療指針を裏付けるものになるかと思うとわくわくしますし、こういう研究がおこなわれているということを知り、日本とはまったく違う医療事情や生活状況を知ることができたことは、大変よい経験になりました。

今回のガンビアでの海外研修参加にあたり、ご協力いただきました多くの方に心から感謝いたします。

バオバブの木の下で働いてます
バオバブの木の下で働いてます
目の観察中です
目の観察中です
バオバブの木の下で働いてます
(村人からの食事提供)
バオバブの木の下で働いてます
クスクスとピーナッツをペースト状にした物
(村人からの食事提供)
クスクスとピーナッツをペースト状にした物
学校から連れてこられた子供たち
学校から連れてこられた子供たち
セネガルにて
新しいProjectのため、Work shopが行われました
トラコーマの診断をする人を選ぶため、最後の試験中です
セネガルにて
新しいProjectのため、Work shopが行われました
トラコーマの診断をする人を選ぶため、最後の試験中です

活動:英国医学研究協議会(MRC)ガンビア研究所のフィールド研究
期間:1992年~ 2004年で終了、現在新たな関係構築を模索中 more

MRC ガンビア研究所の正門
MRC ガンビア研究所の正門
MRC ガンビア研究所の正門
国際色豊かな研究所スタッフによる野外パーティー
国際色豊かな研究所スタッフによる野外パーティー
MRC ガンビア研究所HIVラボラトリー
MRC ガンビア研究所HIVラボラトリー
MRC ガンビア研究所のフィールド研究活動.雨季にジャングルの中に設置されたフィールドへ向かう.
(1994年 ~ 1996年)
MRC ガンビア研究所のフィールド研究活動.雨季にジャングルの中に設置されたフィールドへ向かう.
(1994年 ~ 1996年)
MRC ガンビア研究所のフィールド研究活動.ジャングルの中に設置されたフィールドステーションでの生活.
(1994年 ~ 1996年)
MRC ガンビア研究所のフィールド研究活動.ジャングルの中に設置されたフィールドステーションでの生活.
(1994年 ~ 1996年)

MRC ガンビア研究所のフィールド研究活動.ジャングルの中に設置されたフィールドで住民調査を行う.
(1994年 ~ 1996年)
MRC ガンビア研究所のフィールド研究活動.ジャングルの中に設置されたフィールドで住民調査を行う.
(1994年 ~ 1996年)
MRC ガンビア研究所の外来.毎朝正門の前に現地の患者が列をなすことからゲートクリニックと名付けられた.
(1994年 ~ 1996年)
MRC ガンビア研究所の外来.毎朝正門の前に現地の患者が列をなすことからゲートクリニックと名付けられた.
(1994年 ~ 1996年)
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