ガンビア

熱帯医学・グローバルヘルス研究科開設に向けて、アフリカでの学生実習の可能性
熱帯医学研究所 臨床感染症学分野 大学院生 島田郁美

2014年7月6日から9月7日にかけて、ガンビアのMedical Research Council (MRC)研究所に行ってきました。2015年10月開校予定の熱帯医学・グローバルヘルス研究科(TMGH)の海外実習予定地を視察するためです。
ガンビアは西アフリカに位置するアフリカ最小国で、かつては英国植民地でした。 1947年に英国がアフリカの医療向上を目的とした医学研究施設としてMRC研究所を設置しました。それ以来、英国を始めとする欧州、アフリカ各国から多くの研究者が来訪し幅広い分野で医学研究が行われています。当科有吉教授がかつてHIV関連研究を行った施設でもあります。ガンビアは治安がよく、英語が公用語のため日本人には住みやすい国と言えます。MRCによる研究の歴史が長く研究環境が大変整っている上に、MRC研究所は留学生、短期実習生も常時受け入れているため学生実習にも大変慣れた施設です。英語圏出身者ばかりではなく、フランス語を公用語とする西アフリカ諸国からの留学生も多数在籍します。これらの理由から、日本人学生には最適の実習施設であると考えられました。
MRC研究所のメイン施設は首都バンジュールから9kmのFajalaにあります。支所は中部のKeneba、最奥地のBasseに存在します。それに加えて各地にフィールドサイトがあり、アフリカ奥地で研究ができる貴重なネットワークが構築されています。また、MRC Fajala研究所には42床の入院施設を有した病院が併設されており、年間5万人を超える外来患者を診療しています。

滞在中各国からの留学生、実習生にヒアリングを行いました。彼らの実習プランはTMGH校の学生実習にも応用できるものが多くありました。
英国からは多数の医学部生が1ヶ月から2ヶ月にわたって夏期休暇などを利用して渡航しており、それぞれ観察研究を行う傍らで、入院病棟での病棟実習に参加していました。その中の1人、スコットランドのAberdeen大学医学部生は病棟スタッフの手指衛生に関する観察研究を行っていました。最終週に研究結果プレゼンテーションを行い、スタッフに結果のフィードバックがありました。手洗いや手指消毒の不十分さ、その一因として物品配置に問題があること等を指摘した結果、各入院ベッドに擦式消毒用アルコールボトルが配置され、シンクには手洗いプロトコールのポスターが貼られました。こういった衛生環境の整備はアフリカでは稀で、研究の結果小さな改善が得られたのは印象的でした。また、Edinburgh大学免疫学修士学生は、基礎研究としてNK細胞活性について半年間の実験行い、修士論文を執筆していました。このように学部生、修士学生を問わず、短期から長期に渡り学生を受け入れて研究指導することはMRCでは極めて一般的な光景であり、TMGH校のコンスタントな学生実習先として関係構築していくことは十分可能であると思われます。
アフリカ諸国からも多数の留学生がいました。ガンビアを除く西アフリカ諸国のほとんどはフランス語が公用語のため、この地域からの留学生は英語が全く話せません。そのため、半日を語学学校で過ごし、半日はMRCで研究活動に費やすという語学留学と研究留学を組み合わせたプログラムも一般的なようでした。こういった非英語圏からの留学生に、MRC研究所が慣れていることは日本人にとっては大きな利点です。 また、滞在期間中は入院病棟での臨床見学もさせて頂きました。小児16床、成人24床、個室2床という配置で、日本とは全く異なった疾患を診ることができます。特に印象に残るのは小児の低栄養でした。ガンビアは食料難に喘ぐ地域ではありませんが、小児病棟の7-8割は低栄養の幼児で占められています。日本では虐待症例でもなければ、低栄養疾患を診療する機会はまずありません。診察、治療方法など大変勉強になりました。下記は母親の許可を得て撮影した写真です。低栄養には他にも様々な身体所見が表れますが、写真で紹介しやすいものをピックアップしました。
クワシオルコルの2才男児の両下腿です。入院治療後、自分で座れるようになった頃の写真です。下肢の皮膚色がまだらに薄くなっている部分は、クワシオルコルによる浮腫後の皮膚剥離です。足底もかつての浮腫を伺わせます。
同患児の睫毛です。低栄養児は毛髪がカールします。アフリカ人の毛髪はそもそもカールしているためわかりにくいのですが、睫毛が瞼に接するほどまでくるんとカールするのは低栄養の所見なのだそうです。さらに、もう1点。この写真を取るにはタイミングが大変難しいことは容易に想像がつくと思います。本来なら好奇心旺盛な年頃ですので、カメラを向ければまずじっとしていてはくれません。一方、この子はカメラにはほとんど興味を示さず、目をあけてジーッと前を向いていました。入院中、笑顔を見ることもほぼありませんでした。表情の少なさ、自発性の低下も低栄養の一症状です。
他にも、日本でなかなか目にしない疾患として、リウマチ熱、それによる弁膜症と若年者の慢性心不全、マラリア、鎌状赤血球症など多様な疾患を有する患者様を診察させてもらいました。イギリス人専門医による病棟回診では、質疑応答も活発に行われ、大変教育的です。
2ヶ月を通してMRCでの研究、学生実習、臨床を視察し、TMGH校にとって大変有力なカウンターパートになるに違いないと感じました。将来、TMGH校の学生達がガンビアで活躍する機会のあることを強く願っております。

MRC Fajala研究所から徒歩10分のビーチ。
MRC Basse 研究所の裏を流れるガンビア川。
夕暮れ時が大変美しいです。
Basse、データ収集に立ち寄った村からの帰り道で車のタイヤがパンク。修理している様子が珍しかったらしく寄って来た子供達。カメラを向けたらダンスを踊ってくれた子も。動画じゃないの、ごめんなさい…。

大きなバオバブの木の下で
長崎大学病院 熱研内科 研修医 宮原 麗子

2009年10月末より7週間、アフリカのガンビアという国で、トラコーマ研究のフィールドワークに参加してきました。ガンビアはアフリカ最小の国で、ガンビア川の両側に国土を有している細長い国です。植民地時代にイギリスとフランスとの協定により、セネガルの中央部を流れるガンビア川周囲の土地がイギリス領となりました。そのため、現在も周囲をセネガルに囲まれています。

今回参加した研究は、ガンビアのNational Eye Care Program とイギリスのMRC(Medical research council) の共同研究で、WHOが推奨しているトラコーマ治療が適切かどうかを検討するものでした。WHOの推奨している治療は、地域の罹患率が10%以上であれば、3年間、その地域全員に対して年に1回、アジスロマイシンを投与するというものです。3年後に再度罹患率を調査し、治療を継続するべきかどうかを決定します。今回の研究は、投与期間が3年必要なのかどうかを検討するため、毎年罹患率を調査しています。

私が参加したのは、18ヶ月目のフォローアップで、48地域を2グループに分けて、それぞれの地域を訪問し、こどもたちの目(上眼瞼)を見ていきます。約6000人弱の子供が対象となっています。 私は、2グループのうち1つのグループを任され、ガンビア人5人とガンビアの土地を約6週間ひたすらLand cruserで走ってきました。

どこの村にも大きなバオバブかマンゴーの木があり、その下に机を広げ、子供が来るのを待ちます。ガンビアには住所はありません。住民票ももちろんありません。誕生日や年齢もわからない子供はたくさんいます。なので、聞き取り調査で作られた、census formをもとに子供を見つけます。一つの家に、複数の家族が住んでいることは多く、時には、一家の長となる人が、住んでいる子供を把握していないこともよくあり、子供を見つけ、つれてくるまでが一番大変な作業です。子供がやってきたら、感染がないか眼瞼を肉眼的にみて確認し、さらにPCR検査をするため、Swabで検体をとります。こうして感染がないかを一人ずつ確認していきます。残念なことに(ガンビアにとってはいいことなのですが)、ガンビアでのトラコーマ感染は減少しており、Activeなトラコーマはほとんど見ることができませんでした。

ガンビアにはNational Eye Care Programと呼ばれる政府団体があり、トラコーマに限らず、住民の眼疾患に対応しています。1年ほどの研修を終え、Eye specialistとして働く看護師がそれぞれの地域に少なくとも1人はいて(現在の総数は25人)、地域のクリニックや病院でEye care unitを開いています。Eye specialistの仕事は多岐にわたり、学校での衛生面の教育から手術に至るまで行います。このような人たちの仕事によって、ガンビアの感染率は着実に減少しているようです。現在の問題は、周辺国(セネガルやギニア=ビサウ)での感染をいかに減少させ、ガンビアへ持ち込ませないかということで、現在周辺国での新たなProjectが進行していました。

フィールドワークってどういう風に、どんなことしているんだろう。初めはその単純な興味からでした。London schoolのRobin Bailey教授をはじめ、多くの方にお世話になり、刺激をうけて帰ってきました。この研究が今後の治療指針を裏付けるものになるかと思うとわくわくしますし、こういう研究がおこなわれているということを知り、日本とはまったく違う医療事情や生活状況を知ることができたことは、大変よい経験になりました。

今回のガンビアでの海外研修参加にあたり、ご協力いただきました多くの方に心から感謝いたします。

バオバブの木の下で働いてます
目の観察中です
 

村人からの食事提供     左)米と魚と野菜
右)クスクスとピーナッツをペースト状にした物
学校から連れてこられた子供たち
セネガルにて
新しいProjectのため、Work shopが行われました
トラコーマの診断をする人を選ぶため、最後の試験中です

活動: 英国医学研究協議会(MRC)ガンビア研究所のフィールド研究
期間: 1992年 ~ 2004年で終了、現在新たな関係構築を模索中

 

MRC ガンビア研究所の正門
国際色豊かな研究所スタッフによる
野外パーティー
MRC ガンビア研究所HIVラボラトリー
MRC ガンビア研究所のフィールド研究活動.雨季にジャングルの中に設置されたフィールドへ向かう.
(1994年 ~ 1996年)
MRC ガンビア研究所のフィールド研究活動.ジャングルの中に設置されたフィールドステーションでの生活.
(1994年 ~ 1996年)
MRC ガンビア研究所のフィールド研究活動.ジャングルの中に設置されたフィールドで住民調査を行う.
(1994年 ~ 1996年)
MRC ガンビア研究所の外来.毎朝正門の前に現地の患者が列をなすことからゲートクリニックと名付けられた.
(1994年 ~ 1996年)
 
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