HIV/AIDS

「バクマイ病院感染症科での夫婦間HIV感染に関する研究」

ベトナム国立バクマイ病院感染症科における夫婦間HIV感染に関する研究のレポート (PDF)

島田郁美

Intracellular cytokine staining (ICS)について

私が現在、主に取り組んでいる事はIntracellular cytokine staining (ICS)と呼ばれる実験手法の取得です。

ICSは、細胞内で産生される物質(タンパク質:主にサイトカイン)を細胞内で染色して同定する手法です。細胞質内で産生されたタンパク質は小胞体、ゴルジ体を経て細胞膜、あるいは細胞外に運ばれるわけですが、ICSではまずgolgi blockerと呼ばれる試薬を用いて細胞内のタンパク質輸送経路を遮断します。これにより産生されたタンパク質が細胞内に留め置かれる事になります。

輸送経路を遮断した状態で細胞の固定と、後から細胞内に抗体が進入出来るように試薬を用いて細胞膜の透過性を亢進させます。

最後に、調べたいタンパク質に対し特異的な抗体に蛍光色素を結合したもので染色を行います。
このようにして染色した細胞を解析する機械がフローサイトメトリーです。

血清中のタンパク質を計測する手法では果たして計測したタンパク質が、産生している予想される細胞に由来しているのかどうかが問題でしたが、ICSではタンパク質と産生細胞の関係が明確にわかるという利点があります。

ICSは感染症や呼吸器疾患などの分野での臨床応用が期待され、またその方法をさぐる事が私の当面の課題と言えます。

松木 啓

「計算化学的手法を用いたHIV特異的細胞障害性T細胞(CTL)認識エピトープ のFine Mapping」について

HIV特異的細胞傷害性T細胞(CTL)によるHIVの認識と,HIVのCTLからの逃避の関係を解明するためには,HIV由来のエピトープ(8~11残基程度の長さ)とMHC-class I分子との結合状態を詳細に調べることが不可欠です.

そこで各種のHLA-ClassⅠとそれに結合するHIV由来のCTLエピトープの組み合わせを探していくのですが,これを実験的に行うと,最適なCTLエピトープを同定するまでに多大なコストと労力が必要となります.また,計算によりエピトープを予測するプログラムがいくつか公表されていますが,いずれも予測の精度や対応できるHLA-ClassⅠの種類がまだ不十分です.そこで我々は,CCG社(カナダ)の統合計算化学システムMOE(Molecular Operating Environment)を用いてMHC-classⅠとエピトープ候補のペプチドとの結合シミュレーションを行い,その親和性を求めることにより最適なCTLエピトープの予測を試みています.

松木 啓

「北タイにおけるHIVコホート研究」

有吉は教授就任前までJICA専門家としてタイに滞在し,タイ国立衛生研究所研究(NIH)チームを指導して,北タイにHIV感染者とその配偶者を対象にしたコホート研究を運営してきた.長崎赴任後もその指導的立場にある.この研究は2000年7月より開始,タイ北部ランパン県の中核病院であるランパン病院HIV外来を受診するHIV感染者および配偶者を対象にしたコホート研究である.これまでコホートに参加した総人数は1,374名,2004年10月時点での追跡率は93%と高い率を維持している.このコホートには300組以上の夫婦が参加し,155名のHIVに暴露されたが感染していない配偶者が含まれている点で新規性が高い.また,ランパン病院内にフィールドラボラトリーを設置してコホート開始時から患者検体を保存し,コホート研究を臨床疫学から宿主遺伝子多型・分子免疫学・分子疫学・ウイルス学等の基礎科学研究への展開を可能にした.このことは,国立感染症研究所・大阪大学微生物学研究所・近畿大学免疫学教室・東京大学医科学研究所など日本の研究者とタイ人研究者との共同研究を促進し,結果として数多くのタイ人研究者が育成されている。

現在進行中の研究分野は,HIV感染の自然経過と死亡リスク因子解析,HIV感染者を親に持つ子供を取り巻く社会環境調査,抗HIV薬普及によるHIV感染者生存率への影響,抗HIV薬治療の成功に影響する薬剤服用行動パターン,北タイエイズ患者の中枢神経系ウイルス感染,HIV感染者に重複感染したB型およびC型肝炎ウイルスの影響,HIV感染抵抗性に関連する宿主遺伝子因子,エイズ進行遅延に関連する宿主遺伝子因子,HIV特異的細胞障害性Tリンパ細胞認識部位の分子レベルでの解析,タイ流行株クローンウイルスを標的に用いた中和抗体,タイに流行するHIVの分子疫学,HIV伝播前後のウイルス進化,HIVタイ流行株の薬剤耐性などである.今後も現地の研究チームの育成を尊重した共同研究を促進させ,アジアのHIV感染者に対する治療・ケアの向上と,フィールドとサイエンスを結びつけた研究を継続することにより,現状では打開策のないHIV感染防御のための新しい概念の発見を目指す。

「西アフリカにおけるHIV-1の分子疫学的研究」

HIV-1の起源に地理的に近い西アフリカでは,欧米や日本で流行するHIV-1に比べてより多様のHIV-1サブタイプが流行している.有吉が就任していた英国医学研究協議会ガンビア研究所・国立感染症研究所との共同研究で,ガンビアに流行するHIV-1の分子疫学的研究をHIV-1単独感染者群とHIV-1/ HIV-2重複感染者群との比較検討を進めている.特に1990年以前から存在するHIV-2流行が近年増加傾向にあるHIV-1流行にどのような影響を及ぼしたか,その相互作用について解明されることを目指している。

「ウガンダのHIV/AIDSと日和見感染症」

1990年当時,ウガンダは世界で最もHIV-1感染率の高い国でした.ウガンダ,マケレレ大学医学部部長のキーリア教授が熱帯医学研究所を訪問されたのを契機に,1991年から熱研内科と首都カンパラにあるマケレレ大学医学部との共同研究が始まりました.ウガンダのHIV/AIDS患者における日和見感染症として結核の臨床像,クリプトコッカス髄膜炎の臨床像を明らかにしてきました.クリプトコッカス髄膜炎については,フルコナゾールとフルサイトシンによる併用治療効果についてはじめて報告しました(Mayanja-Kizza H, et al. lin. Infect. Dis. 26:1362-1366,1998).また,ウガンダにおけるHIV-1感染と市中肺炎の起炎菌の実態を明らかにし(Yoshimine H, et al. Am. J. Trop. Med. Hyg. 64:172-177),ペニシリン短期治療を推奨しました(写真).この研究では,マケレレ大学医学部附属病院における喀痰を用いた病原細菌分離培養・同定をルーチン検査化しました.これらの研究において,HIV感染者に頻繁に肺炎球菌性肺炎が認められました.そこで,私たちはHIV感染者における易感染性の一因として患者血清中の血清型特異的IgG抗体の機能異常が存在するのではないかとの仮説を立てました.その後の検討の結果,患者の血清中肺炎球菌に対するオプソニン活性がHIVウイルス量の増加とともに低下することを明らかにしました(Takahashi H, et al. Clin. Infect. Dis. 37:1534-1540,2003).現在,抗ウイルス療法を受けていないHIV感染者において,肺炎球菌コンジュゲートワクチン接種による液性抗体の機能回復が見込めるか否かについて検討中です。

一方,1999年からはカンパラ市にあるJoint Clinical Research Centerとも共同研究を進めています.ここでは,HIV-1感染者の病勢の進行と末梢血Tリンパ球のケモカインレセプター発現について検討し(Oishi K, et al. J. Interf. Cytok. Res. 20: 597-602,2000),HIV-1感染病態が進行に伴い末梢血CD4陽性Tリンパ球のCCR4, CCR5の発現は増加したが,CXCR4発現増加は認められないことを報告しました.結果として,HIV-1感染の進行した段階におけるメモリーT細胞の増加が示唆されましたが,明らかなTh1/Th2シフトは認められませんでした.その後にはHIVの進行と相関する末梢血単核球の遺伝子群をcDNA マイクロアレイを用いて明らかにしました(Motomura K, et a. Int. Immunopharmcol. 4:1829-1836, 2004).この方法で感染者はその遺伝子発現パターンからcluster I, II, IIIに分類され,この分類はそれぞれの症例のHIV感染病期に関するCDC分類とよく一致しました.Cluster III(進行期)の症例で40の遺伝子が発現増強もしくは減弱を示した.これらの遺伝子はT細胞分化,アポトーシスシグナル,HIV複製の活性化に関与し,HIV-1複製に付随した成熟T細胞の破壊や再生が進行期には関連することが示唆されました.また,症例の経過フォローにおいては,cluster分類による予後推定がCDC分類による推定より優れていた.cDNA マイクロアレイによる遺伝子発現の定量的分析はHIV感染者の免疫病態,病因,病期進行に関する新しい解決法を提示できることを示しました。

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