HOME > ごあいさつ > 拠点リーダーあいさつ

ごあいさつ

拠点リーダーあいさつ

  • 私は2008年から2012年まで5年計画で進められるグローバルCOEのリーダーを務めることになりました熱帯医学研究所長の平山です。私の専門は、寄生虫学・免疫遺伝学で、これまでヒトが感染症にかかったあと重症化したりあるいは簡単に回復したりするのがなぜなのか研究してきました。たとえ同じように新型インフルエンザウイルスにさらされたとしても、決して死亡率100%にはなりません。かならず生き残るヒトがいるはずです。どうして「いるはずです」などと言えるのでしょうか。それには大きく二つの理由があります。
  •  ひとつは、人類は生命の誕生以来、長い間生き延びてきたことです。長い進化の歴史の中でヒトあるいは生物は環境のあらゆるリスクにさらされながらもなんとか生き延びてきました。その間の経験はすべて我々の細胞が持っている遺伝子DNAの中に刻み込まれています。エネルギーを作り出す仕組み、太陽や地球環境に対応する感覚受容器、外部刺激を入力統合して外部に反応する神経筋肉システム、そして他の生物の体内への侵入や増殖を防御する免疫システムなどはすべて非常に単純なモチーフを徐々に進化させて今のヒトが持っているような巧妙なものに作り上げていったのです。ちょっとやそっとの外敵でやられるような柔な体ではないはずなのです。 もう一つは、ヒトが一人一人個性を持っているからです。どこかの国のマスゲームは別ですが、本当にヒトはまちまちで同じことをやろうとしても同じにはできません。この個性の大部分は遺伝子の多様性により出来上がっています。もちろん、神経ネットワークのでき方や免疫抗体の種類などはその人のそれまでの環境や経験に影響されるでしょう。しかしそれでも遺伝子の影響はやはり大きなものです。この遺伝子自体の性質として、多様性を保とうとする性質があることがわかっています。この多様性がどんな外敵が来てもヒトが全滅することを許さないのです。
  •  そうは言ってもやはり自分がその生き延びるほうに入ると確信できる人は少ないでしょう。このGCOEは実は皆さんがすべて生き残れると確信できるようにしたいと思っています。長い進化の過程で培われた感染症に対する防御システムを理解し、多様な個性をもった人たちにその人たちに合った防御システムを使ってもらえるようにしていく。
  •  私は自分の専門領域からこのような夢を話しましたが、我々のGCOEは20名のいろいろな分野の専門家が感染症防御システムの理解に取り組んでいきます。世界中から若い優秀な学生や研究者も集うことになっています。これらの人たちの相乗作用がどんな大爆発を起こすのか、どうぞ楽しみにごらんください。