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ごあいさつ

大学長あいさつ

  •  サブプライムローン破綻に始まる米国の100年に一度といわれる経済不況が、瞬時にして世界を覆ってしまいました。経済不況にかぎらずエネルギー問題、食糧問題、環境破壊、感染症など現代の最大懸案は全て地球規模であり、地球と人間の存立そのものを脅かしかねない拡がりを見せつつあります。このような時代におけるアカデミアとしての大学の責務は、世界と人類に貢献する新しい知の創造であり、それを担う次世代人材の育成だと思います。その観点から、グローバルCOEプログラム「熱帯病・新興感染症の地球規模統合制御戦略」はまさに長崎大学を代表する"知の発信拠点"といえます。
  •  長崎大学の感染症研究の歴史は古く、戦前からの長崎県の離島を中心に流行した感染症(風土病)克服のための研究に始まり、幾多の世界に誇る業績をあげてきました。1967年の風土病研究所の熱帯医学研究所への改組を契機に、研究活動はアジア、アフリカなどの途上国に拡大し、特色ある熱帯医学研究が展開されてきました。このような長年にわたる先輩たちの努力と蓄積が評価され、2003年「熱帯病・新興感染症の地球規模制御戦略拠点」が21世紀COEプログラムに採択されました。2005年には永年の懸案であった本学スタッフが長期間常駐する海外感染症研究拠点をベトナムとケニアに創設しました。学長直轄の「国際連携研究戦略本部」には国際協力の現場に通暁した専門家人材が集結し,本プログラムの国際連携研究や海外拠点の運営・マネジメントに多大の貢献を果たしています。これら学内外のインフラ整備を基盤に,既にいくつかの特筆すべき研究成果を世界に発信しつつあります。人材育成面でも従来の博士課程(新興感染症病態制御学系専攻)に新たにコースワークを導入し教育の実質化を図るとともに、医歯薬学総合研究科に熱帯医学修士課程を,独立研究科として学際性に富む国際保健開発研究科を新設しました。いずれも本邦初の特色ある修士課程であり,途上国現地で活躍できる研究・国際協力人材の育成を目指しています。
  •  5年間の21世紀COEプログラムの成果を受け、2008年度からグローバルCOEプログラム「熱帯病・新興感染症の地球規模統合制御戦略」として長崎大学の熱帯医学・感染症研究は新たなスタートをきりました。新型インフルエンザなど感染症まん延に対する対策は最重要の地球規模課題となっており、本プログラムの責任はますます重要性を増しています。基礎研究で得られた発見の成果を医薬品開発研究に応用した新しいワクチンや薬剤の開発や、途上国流行地でこれらの医薬品を効果的に流通・配布するための社会開発学的研究成果など、世界の感染症対策にインパクトを与える成果を量産する義務を背負っているといってよいでしょう。
  •  本プログラムにより世界の多様な科学者が集結する真の意味でのグローバル拠点が長崎に形成され、21世紀世界の平和と人類の福祉(安全・安心)に大きく貢献することを確信しています。