大会長挨拶

 第69回日本衛生動物学会大会を、平成29年4月14日(金)〜16日(日)の会期で長崎市に於いて開催することとなりましたので謹んでご挨拶・ご案内申し上げます。 長崎市での同大会開催は、長崎大学名誉教授:高木正洋 大会長による第58回大会(平成18年4月)以来、11年ぶりとなります。  

 長崎は日本における西洋医学発祥の地とされます。 シーボルトに端を発し、後に幕府からの要請で来日したオランダ人の若い医師ポンペが松本良順らに講義を行ったのが医学伝習所、現在の長崎大学医学部です。 これらの先達の名を拝した良順会館、ポンペ会館が本大会のメイン会場となります。 長崎はまた、日本の熱帯医学においても重要な拠点となってきました。私どもの所属する熱帯医学研究所の前身となる東亜風土病研究所が長崎大学に設立されたのが1942年で、来年は創立75周年を迎えます。

 今回の大会ではそのような長崎と医学の歴史も鑑み、多様な衛生動物学の研究の中でも特に人の病気との関係が深いトピックを集めたシンポジウムを企画することにしました。 かつてフィラリアが身近な風土病であり、また日本脳炎の症例も多かった時代に比べると、日本において、病気の原因としての衛生動物の重要性が薄れてきた時代があったと思います。 しかし、2013年よりマダニに媒介される重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の国内症例が相次いで報告されたり、2014年には約70年ぶりとなる国内での大規模なデング熱流行がおこったりと、衛生動物学の対象である蚊やダニが医学上重要な存在として再び注目されています。
 一方海外の熱帯地域に目を向けると、日本国内では制圧されたマラリアや住血吸虫症といった病気が現在でも猛威を振るっており、蚊や巻貝が媒介者、中間宿主として病気の伝播における重要な役割を果たしています。 昨今のこのような状況で、衛生動物学の研究が人の病気の制圧にどのような貢献をなしうるのかを改めて考えてみる機会になればと思います。

 学会員の皆さま同士が情報を交換したり刺激を与えあったりすることが大会の主な意義だと思いますが、様々な衛生動物を専門にする研究者が一堂に会する場である大会は、一般市民の皆さんへの情報提供というかたちで社会貢献をするチャンスでもあると考えます。 今回の大会では長崎大学とも共同で市民公開講座を開催し、身近な衛生害虫の対策について数名の専門家に話していただこうと計画しています。

 以上のような大会企画も楽しみですが、大会の一番のコンテンツは何と言っても会員の皆さまによる一般講演です。 是非とも長崎にて最新の研究成果をご披露下さい。 多くの演題の応募を心よりお待ちしております。  

 長崎は観光地で、新世界三大夜景に認定された夜の景色も見事なものです。 坂本龍馬ゆかりの史跡や、「明治日本の産業革命遺産」のひとつとして世界遺産に登録された軍艦島などは市の中心よりアクセスも容易です。 また、新鮮な海の幸や、ちゃんぽん、角煮まんじゅう等、美味しい食事も是非ご堪能下さい。  

 本大会が学術的に活発な場となるよう、そして参加者の皆さまに長崎での滞在を楽しんでいただけるよう、大会実行委員会一同とともに尽力してまいります。 どうか奮ってご参加下さい。   

 

平成28年11月  

 

第69回日本衛生動物学会大会
大会長 皆川 昇         

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