何のために

世界的な貧富の差の拡大は,各地で大きな社会不安をもたらし,犯罪の増加や治安の悪化,汚職の横行等の他,一部の過激派によるテロリズムや戦争へと発展しています。貧困地域の保健衛生状態も深刻で,寄生虫病をはじめとする風土病は,地域内ばかりでなく,時にエボラ出血熱のように広域に拡大し,地域問題ではなく地球規模で対処すべき問題となっています。とりわけ世界の人口の8割を占める途上国や熱帯地域の貧困層を苦しめる寄生虫疾患等の慢性感染症対策には公的な支援の枠組みが必要で、その対象となる感染症のことをまとめて顧みられない熱帯病(NTD)と呼んでいます。これらの病気は貧困層の病気であるため,新しい薬を作ったとしてもそれに見合う薬価が期待できず,先進国の民間企業がその開発に二の足を踏んでいるという特徴があります。日本はG7諸国を主導し、20年前から「橋本イニシアティブ寄生虫対策プロジェクト」や「太平洋地域フィラリア症対策プログラム」などこの領域の主要なプログラムを支援してきましたが,未だ十分とはいえず、特に熱研には日本を代表する熱帯感染症の研究センターとしての先導的な役割が強く求められています。そこで所内にこの領域の研究活動をさらに促進するメカニズムとして、産学官連携を主体とするNTD制御のための医薬品開発研究推進するためのセンターを2016年度より開設しました。